「仕事の事を考えてしまい、なかなか寝付けないんです」
健康相談に来る社員の話の中で、こういった状態に陥っている人は決して少なくありません。任される業務量はどんどん増えていく、デッドラインが迫っているプロジェクトも並行している、日中は会議ばかりで自分のタスクに取り掛かれるのは定時退社の時間になってから。こんな状況だと、家に帰ってからも脳のスイッチをオフにすることができず、ずっと仕事のことを考えるのはごく自然なことかもしれません。
|脳による自然現象?!
ここで不思議だと思いませんか。なぜ、これが「自然なこと」なのでしょうか。
それは、実は私たちの脳がそうさせているかもしれないから、なんです。
みなさんは、Zeigarnik Effect(ザイガルニック効果やツァイガルニク効果と呼ばれます)という言葉を聞いたことがありますか。一言でいうと、「脳は、完了した事より、未完了な事や達成できていない事を記憶しやすく、緊張感を生じさせる」という現象のことです。
実はこのZeigarnik Effectは、誰でも日常的に経験しています。
例)ネットドラマで1つだけ見ようと思ったが、続きが気になってしまい、つい次のエピソードも、さらにその次のエピソードも見てしまった
例)ポップアップされた広告サイトで、「ダイエットに効果的、驚きの食べ物●●とは?!」という文字を見て思わず広告サイトをクリックした
こんなふうに脳は「気になること」に対する緊張をリリースするために、私たちに行動(意図しないものも)をとらせてしまうのです。
この何気ない日常でも起こり得る脳の機能ですが、仕事とからんでくると厄介なものになってきます。それが、冒頭の社員の状態です。業務の質量ともに負荷が高い、でも1日に進められる部分は期待以下、複数の会議にも出席して、とにかく複雑極まりない業務の中に身を置いているわけです。さらに、「今日はとりあえず寝よう」と思っても、自分の脳が「未完了!未完了!」とシグナルと出してくるので、考えざるを得ない。結果、寝入りに2-3時間かかってしまい、翌朝は寝不足で出社、という悪循環が生まれてしまいます。
|上手に付き合うためにできること
私自身、こういった状況は何度も経験します。翌日の会議のために、準備すべきことが終わらなかったという日の睡眠の質はきまって下がります。でも、様々な手法や考え方で、この緊張感が緩和されることも経験しています。
以下、普段私自身がやっていることについて振り返ってみます。
①スモールタスクに分解する
大きなタスクを目の前にすると、達成までの道のりは長く険しくなりがちです。私は、「今回はここまでできれば合格」というところまで、タスクを細かく分けて管理するようにしています。そのためには、まず全体像を俯瞰すること。そこから出るタスクや工数を時間軸の上にのせていき、自分のキャパシティやリソース(時間・体力・気力)と突き合わせる。そして、工数をチャンクダウンをし、30分で終えられるくらいのミニタスクを作っていきます。ビッグタスクがミニタスクになると、意外と「こんなもんか」というレベル感までにおさまってきます。そして、大事なことは、とにかくその日に「完了した!」と思えるくらいのものを作っておくことです。すると、1日の終わりに、完了したものが可視化され満足感を得られることが増えてきます。これは夜の安眠にはとても効果的です。
②未完了事項は書き出す
私は物事がふわふわと曖昧な状態になっていることがあまり好きではありません。なので、未完了事項はあえて書き出しています。その日の未完了事項に限らず、できればやっておきたいという中長期的なスパンでの未完了事項も書き出します。ポイントは、言語化・文字化をすることで未完了事項を再認識し、完了させるために何が必要かを落ち着いて考えることにあります。ここで不安や焦りを感じないわけではありません。でも、終わっていない、という状況はどう頑張っても変えられないので、とりあえず受け入れます。そして、文字になった未完了事項を眺めていると、どうやれば最短で終わらせられるか等、段々冷静になっていく自分を感じることができます。これは、朝起きた時や、仕事を終える直前にやると良いと思います。この時、私は必ずノートとペンを使います。手を動かすことでより能動的に取り組んでいる感覚がするからです。
③寝る前のルーチンをただやる
最後に、これは良質な睡眠を保つためにやっていることです。未完了を考えていても、あまり良い眠りは得られません。夜は、湯船につかる、家族と雑談やゲームをする、子供に本を読む、そして概ね決まった時間に消灯する、というルーチンを維持しています。これにより、体のバイオリズムが保て、眠気を誘導することができます。翌日に大事な会議がある時ほど、夜のルーチン通りに動くことで良く眠り、翌朝早めに起床し、スッキリした脳で未完了に取り組むように心がけています。
未達事項を考えると眠れないというのは、脳に備わっている機能の一つ。その特徴を理解すると、小さな完了を増やす、未完了リストを完了する等、うまく付き合う方法が出てきます。睡眠は、心身の状態を良好に保つために重要なこと。皆さんも、未達に追われて眠れなくなってしまう夜に備え、自分なりの付き合い方を確立していってくださいね。
