皆さんは、Googleで開発されたSearch Inside Yourself(SIY)を聞いたことがありますか。このSIYは、「Google社が、マインドフルネス・神経科学・エモーショナルインテリジェンスを融合し開発した、一人一人の個性とリーダーシップを探求するためのプログラム」(MiLI Webより)です。
私は2019年にこちらのワークショップに参加したのですが、ここでの学びはまさに目からウロコでした。あらゆる方法を通じて自分の意識を捉えなおし、そこに集中するというマインドフルネスの要素を体得する試みですが、特にマインドフル・リスニングは、今でもまだ習得したとは言えないほどの厚みでした。
私たちは普段、家族や友人の話を聞いているようで、実は次の予定のことや「どんなアドバイスしようかな・・」「自分だったら・・」と、様々なことを考えています。私もよくやってしまいます。でも、その状態は「心ここにあらず」であり、話している相手に意識を集中していない状態でもあります。
|職場の相談から見えること
職場においても、「上司に話が伝わらない」「言っても何も変わらない」と話す社員は一定数いると感じています。自分の伝えたいことが相手に伝わっていないために、理解してもらえないという感覚が生まれてしまう。そういった場合、「自分の話は、上司にとってあまり価値がないのではないか」と、自信を失う様子がうかがえます。
個人の価値観が多様化し、各自が置かれている環境も複雑化している中、より良い人間関係や職場環境を創造するためには、一人一人(特に立場が上の方)が「聞く力をつけること」は必須だと私は考えています。それは、「相手が安心して話しやすい環境をつくる力」とも言えるでしょう。しかし、例えば、上司や同僚に相談をしている際に、次のような態度をされたらどうでしょうか。
●目が合わない、あいづちのタイミングが悪い
→部下には、「上司は違うことを考えているな。自分の話は意味がないのかな。」と伝わる
●途中で口を挟む、眉間にしわがよる
→部下は「なんだか攻撃的だな。きっと都合の悪いことは聞きたくないんだな」と感じる
●否定的な言葉、話したことを論破する
→部下は「これは勝ち負けの議論になっている。この人は、自分が優位であることを示したいのだろうか」と考える
職場でこのような態度に遭遇された方は少なからずいるのではないかと思いますし、自分もついついやってしまう、ということもあるかもしれません。
相手にこのような態度を示された時、上記のようにネガティブな感情が持ってしまいがちです。自分の言っていることが間違っているのではないかと不安になったり、自分には能力がないのだと自信を失うといったネガティブな感情を抱き、ついには相手への信頼感にまで影響を与えかねません。
|変化は、「気づく」ことから
私たちが何かを変えようと思う時とは、それが望まない結果を生んだり、それによって良くない結果が起こりそうだと予測した時でしょう。自分が日常的に行っているコミュニケーションスタイルにおいても、実は周囲との関係性や職場の空気感に影響を与えている、しかも常にポジティブなものとは限らない。そうだとしたらぜひ一度立ち止まって考えてみることをおすすめします。
会議で部下から報告を受ける時、椅子の背にふんぞり返りながら話を聞いていませんか。
「だから、それは違うって言ったじゃないか!」と、相手の話をさえぎって自論を展開していませんか。
「そんなのは意味がないと思うし、時間の無駄だ」と、相手の理由を十分に聞かず、受け止めもせずに否定だけしていませんか。
特に最近ではオンライン会議やオンライン1 on1 も増えてきているかと思います。画面という非常に限られたスペースで、時間が来ると雑談や余韻もなくブツっと切れてしまうような状況では、より事態が悪化しやすいもの。対面時と同じようなコミュニケーションスタイルでのぞむと、実は相手により強い不安感や恐怖感を感じさせ、結果的に委縮を生じさせ、報告も相談も徐々に少なくなってくることが十分考えられます。
“自分の聞く態度や言葉は、話している相手にとってどんな印象を与えているのだろうか”
まずはこのことを意識することが、聞く力を向上させる第一歩になると思います。「部下にはもっと主体性を発揮して欲しい」、「もっと自分から動いて、自律して欲しい」。そうであればあるほど、上司自らが「部下が安心できる環境をつくる力をつける」、つまり「聞く力」をつけていく必要がある、と現場を見ていて思います。
私自身もマインドフル・リスニングを日々、少しづつ実践しているものの、自分に余裕がない状態では、「聞いていない」サインが出てしまったのではないかと、後になって反省することは多々あります。
聞き方を変える。では、そのために実際どんなことができるのかについて、次回は3つの点から考えていきたいと思います。
