相手に安心感を与え、主体性を引き出す聞き方とは

Occupational Health
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管理職と話をしていると、「主体性を発揮して欲しい」という言葉をよく聞きます。相手が活き活きと色んな提案をしたり、上からの指示を待たず自分で考えて動く、ということを期待されていることがわかります。

とはいえ、自律的な部下を育てるアプローチに、「これさえあれば」という唯一の正解はありません。しかしながら、指示や否定だけをする上司の元では自律的人材は育ちにくい、ということは言えるのではないでしょうか。なので、相手の主体性を育てる時には、「上司の聞く力」は無視できない重要な要素になります。

皆さんは、部下や同僚の話を聞く時、相手にどんな印象を与えていますか。相手が相談してきた時に、「なんで、今さらそんなことを・・」や「何がわからないのかわからない」と、相手の状況や理由を十分に確認せずに言葉を発してしまうことはありませんか。そんなつもりはなくても、言葉そのものや雰囲気(しぐさや表情という「言葉」以外の非言語のメッセージ)がマイナスにとられてしまうことは少なくありません。そうなると、関係がこじれたり、報告や相談が減っていく、またチームとしてもつれた状態になり、結果的にメンタル不調者を出してしまう可能性も十分に考えられます。

ここでは部下の主体性を促進させる1つのアプローチとして、聞く力という点を掘り下げてみます。

|主体を発揮してもらうための聞き方とは?

①聞くための環境をセットする
部下から相談や報告を受ける時、上司の方に締切や急ぎの要などがあり、部下に十分な注意を向けることができないといった状況は少なくないでしょう。そんな時、上司には「早く要件だけ伝えて欲しい」という焦りの気持ちが出てきてしまい、ついついしぐさや言動に出てしまうのはごく自然なことでしょう。では、そんな時どのように対応をすることが、部下が不安な気持ち持つことを回避できるのでしょうか。

まず、今何か他のことに対応しなければならない時は、その情報を相手に伝えることをお勧めます。例えば、「申し訳ない、今どうしてもこれを最優先に仕上げないといけないんだ。あなたの相談にはしっかり集中したいから、今日だと15時以降、明日なら朝9時に時間をとれるのだがどうだろうか?」といった具合に、今の状況と2つ以上の選択肢を相手に提示をする。ここから伝わるのは、「相談を拒否された」という否定的な態度ではなく、上司の誠実で誠意のある姿勢でしょう。「今無理、後でにして」と簡略化した言葉に、状況と選択肢という要素を加えることで、相手に与える印象がだいぶ変わることに気づくかと思います。

実際の相談の場面では、静かでプライバシーが保たれる場所で行うことが肝要です。他のメンバーもいるオープンな場所では、安心して話せないものです。また、相談を受けるときにPCを持ち込んで、そこに記録をしながら聞く場合もあるかもしれませんが、あまりお勧めはしません。PCのスクリーンが物理的な壁となり、また相手から何をしているか見えないため「何か違うことをしているんじゃないか」と相手を不安にさせる可能性があるからです。メモを取る場合は、ノートとペン程度をおすすめします。これらは、相手に「あなたの話に集中しているよ」というメッセージとなり、安心感を与えることに役立ちます。私自身も面談をする時には、PCを必ず相手との直線上から外すようにしています。相手にとって不安や気になることを取り除くことも、環境セッティングとして重要なことなのです。

②相手の「状況」と「状態」を理解し、それを確認する
前回で触れたSIYでは、相手が話す状況や事実に耳を傾けるマインドフル・リスニングのトレーニングを経験しました。そこでは、「その時、相手はどんな状態(感情)だったか」ということまでしっかりイメージしながら聞きます。さらに、ロールプレイの後に、相手に「その時のあなたは○○という気持ちだった、という私の理解は合っていますか?」と、自分の思い込みや決めつけはないかと確認作業も行う、というものでした。

私がこのトレーニングから学んだことは2つあります。1つ目は、相手の状況を理解するには、単に「声が聞こえてくる」という状態から、「しっかりと情報を取りに行く」という能動的なものにシフトする必要があるということ。2つ目は、相手がその時に抱いた考えや感情もセットに理解することで、置かれていた状況をより鮮明にイメージをすることができる、ということです。相手が経験したことを、疑似体験まではいかずとも、「一体何が起きたのだろう」という興味と関心を持って聞く。そして、その理解が合っているかどうかをご本人に確認する作業は、「認識のすり合わせ」以上に「この人は、本当に聞いてくれてるんだ。理解しようとしてくれているんだ」という安心感を与えることにつながります。

私たちは、ともすれば「あぁ、それはわかっている」と咄嗟に思い、「わかったつもり」になることがあります。それにより、相手の話を途中で遮ってズレた回答や助言をしたりすることもあります。

しかし、「自分は、本当に相手の話を理解しているだろうか」という問いを自分の中に持つことで、先走った考えや助言を相手に与えることを回避できます。そして、上記のプロセスで、相手が「自分のことをちゃんと理解してもらえた」と思えた時には、安心感だけではなく、聞いてくれた相手に信頼を寄せることができます。職場の上司や友人、また家族のメンバーに、自分の話をしっかり聞いてもらえた、理解してもらえたといった時の感覚は、皆さんにもきっとあると思います。その時に「あの時、自分の話はどう聞いてもらったか」を思い出すことは、聞き方を変える大きなヒントになるでしょう。

③質問は、ポジティブな目的を持って聞く
悩みを相談した時、上司が「なんで、そんなことをわざわざ考えるの?」と何気なく言ったとしたら、その部下はどう捉えるでしょうか。上司としては、悪気なく、ただ興味があって聞いてるだけのこともあるでしょう。しかし、同じ意図だとしたら、「そうなんだね。あなたがそんなふうに感じた理由をもう少し聞かせてもらえない?」という質問に置き換えることで、相手に与える印象を大きく変えることができます。

相手の話が理解できない、自分の考えとは違う。そういう場面に遭遇したら、意識して質問の作り方を変えてみることをお勧めします。そこで意識することは、「相手と信頼関係をしっかり築く」という点です。私たちは、働く仲間と信頼関係があることで、仕事のトラブルやストレスを回避できることを経験でわかっているところだと思います。

しかし、信頼関係とはそう簡単には築けないことも暗黙知として知っています。残念ながら、信頼関係は放っておいて勝手にできるものではありません。だからこそ、意識的に積極的に相手の話を聞くこと、さらにポジティブな意図をもって質問をすることを通じて、少しづつ関係性をつくっていくものだと私は考えています。

では、「質問の言葉」についてみてみます。部下に質問をする時に、左のストレートな言葉を、信頼を築くための質問に書き換えてみます。

例)
「なんでそうなの?」→「そう考えたんだね。そこに至った経緯をもう少し詳しくきかせてくれる?」
「それを考えたところで、どんな意味があるの?」→「そこが引っかかるんだね。あなたにとって、それがどういう意味を持つのかもう少し教えてくれるかな」
「そんなの気にしないでいいでしょ。僕だったら無視するけどな。」→「そんな風に感じてたんだね。これからどうするか、ちょっと考えてみよう。」

左側から右側への言い回しに変えることで、何が一番変わるか。それは、相手が「自分の話を、もっとこの人に話したい」という気持ちになることでしょう。もちろん言葉だけではなく、話すスピードをややゆっくりにし、声のトーンも親しみがもてるものにすると、より温かで安心を与えるものとなります。大事なことは、悩みを持つ人が「自分の話ができる」という空間をつくり出すことです。聞き手の言葉や態度は、その空間形成においてとても大きな要素であることを是非意識してみてください。

「今は聞けない」と思った時は、それを意識する

相手との信頼関係や前向きな関係性を築くことを常に意識したいところですが、私たちには余裕のない時もありますし、単に調子が悪い時もあり、聞けない場合だってあるものです。その時には、自分の聞き方にネガティブな影響が出るかもしれないということを意識するだけで私は十分だと思います。

大事なことは、自分の聞き方って今どんな感じだろうと、考えるだけです。それだけで、誤解を与えるような言葉やしぐさが調整され、相手に安心感を与えていくきっかけになっていくと思います。

「ローマは1日にして成らず」
信頼関係の醸成も、相手が安心して主体性を発揮するという変化
も、これと類似しているのではないでしょうか。相手に変化を求める時こそ、自らの変化を意識することが必要なのかもしれません。是非、「聞く力」にフォーカスして周囲に接し、どんな発見があるか試してみてください。

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情報社会のビジネスパーソンにとって、
疲労の蓄積を予防したり、
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自らの心身に目を向けることは重要になってきています。
仕事のスキルやナレッジを磨くのと同様に、
自身のメンタルやフィジカルを整えていく。
安定したコンディションを維持するための知見を、
医学や心理学等をベースに紹介します。