先日、訪問先の企業で、メンタルヘルスに関する全社研修をさせて頂きました。主な内容は、ストレス管理とストレスからの回復方法だったのですが、特に回復方法における「良質な睡眠」に対する関心の高さが印象的でした。
振り返ると、私自身も「自分を最適な状態にする睡眠」について試行錯誤をしていたことを思い出します。私の場合、睡眠不足の翌日は、1日中頭痛に悩まされる、イライラしやすい、集中力は半分以下等、イキイキと活動をしている状態とは真逆になるタイプ。さらに小さい子供を育てながらだと、思うように睡眠が取れないこともあり、睡眠グッズや1日の時間管理等、様々なことを試してみたものです。
ここ最近になってやっとル―チンが確立されてきたので、心身の状態は安定するようになったのですが、それは子供の睡眠を中心に置くようになってからです。1日は24時間。「この時間だけは絶対に大事」と決めて、できるだけそこに合わせて動いていくと、自然と好循環になることに気づいたのです。ここでは、自分の方法を振り返りつつ、良質な睡眠の作り方について見ていきます。
|子供の最適睡眠で親の睡眠が変わる
睡眠リズムが好循環になる大きなきっかけは、息子が小学校にあがった時です。スクールバスに乗せることになったため、平日のオペレーションがそれまでとはガラリと変わりました。朝の出発時間は8時半から7時半になり、帰宅は15時から16時になりました。小学校低学年の息子にとって最適な睡眠時間は9~11時間です*。息子はなぜか超早起きタイプで、5時に起きることもしばしばあります。なので、彼にとって最低9時間を確保するためには20時には寝かせないといけない。寝る前は一緒に本を読むため、我が家の寝かしつけは19時半頃から始まります。
間接照明下で読み物をすると、もう20時には私自身も完全にオヤスミモードです。以前は息子を寝かしつけた後にがんばって起き上がり、自分時間を確保しようとしていました。しかし、うす暗い部屋の中で30分も過ごすと、もう脳は眠る気になっています。結局、寝落ちをすることが増えてきたため、自然の摂理に抗うことはやめ、思い切って子供と一緒に眠る、つまり20時に眠ることにし、自分時間を朝にシフトしたのです。
私が「20時に寝る」と言うと、周りにはとても驚かれます。さらに、「朝4時に起きる」と言うと、もっと驚かれます。ちなみに、やることが多い時は3時半起床のこともあります。ただ、5時には息子が起きてきて遊び相手にされるため、何とか早朝に自分時間を確保するしかないと腹をくくって起きているだけなのです。
ただ、朝型にすることで色んな恩恵があることに気づきました。20時に寝ると、4時に起きても8時間睡眠が確保できます。そのため、起床時はエネルギーが最も高い状態であり、かつ家の周りはとても静かな環境です。朝にはスケジュールの見直しから、学びの時間、To do listをこなす等、サクサクと集中して取り組むことができます。時に会食で遅くなる日もありますが、朝4時前後に目が覚めればできるだけ起きるようにして、このリズムが崩れないようにしています。
私の場合、子供の睡眠時間を最重要事項とし、そこから私の睡眠リズムを考えていきました。面談者の中には、22時や23時に子供と一緒に眠るという方もいますが、子供と大人は脳の成長段階が異なりますし、必要な睡眠時間も違うため、お子さんの睡眠時間はできるだけ10時間前後を目指しましょうと助言します。特に幼稚園児から小学生の睡眠習慣はとても大事です。睡眠不足になると、授業中の集中力は下がり、イライラしやすいといった感情制御にも影響を起こします。そのため、学校からは「発達障害ではないか」と言われることもあるようです。こういった場合、専門家がまず最初にやることは、親と共に生活習慣の見直しです*2。特に親と一緒に夜中まで起きているケースでは、適切な睡眠習慣に取り組むだけで、それまでの問題が解決していくことも多いそうです。子育て世代の方には、是非知っておいて頂きたいなと思います。
|良質な睡眠は「睡眠休養感」を意識
さて、成人の睡眠に話を戻したいと思います。「良質な睡眠」という時に、おそらく多くの方にとって大事なことは「睡眠で回復できているという感覚」ではないでしょうか。前日までの疲労やストレスを軽減してくれるような睡眠で、必ずしも睡眠時間の長さに比例したものではないかもしれません。そういう意味で、起床時に自分の心身の状態を確認することは非常に重要です。起きた時に一旦立ち止まり、頭はスッキリしているか、ベッドからスッと起き上がれるか、気分は明るいか暗いか、お腹は適度に空いているか等の状態を確認することを通じて、前日の睡眠の質を検討してみます。休職中の方には生活リズム表をつけてもらっているのですが、睡眠と翌朝の状態を把握することを通じて、はじめて自分に必要な睡眠の長さやリズムが理解できたという方もいます。
睡眠休養感を得ることは、健康寿命の延伸に効果的という報告があります*1。睡眠休養感の確保のためには、やはり日中の生活習慣と寝る直前の睡眠環境の見直しが必要になります。残業等で睡眠時間の確保が難しい働く世代の方々には、まずは量よりも睡眠の質の向上に取り組んで頂きたいと思います。
<生活習慣>
- 日中はできるだけ日光を浴びる
- 朝食はしっかりとる
- 日中(できれば午前中)に軽い運動を行う
- 仮眠をとるなら15時までに20分程度で(夜の睡眠欲求を減らさないため)
- 就寝前4時間のカフェインやアルコールの摂取は避ける
<睡眠環境>
- 入浴は就寝の1-2時間前に
- 寝る直前は軽い読書や静かな音楽でリラックス状態に
- 寝室環境は、夏季は室温26℃、湿度50-60%、冬季は室温15℃以上、湿度50-60%が目安
- 就寝前は、間接照明を取り入れる(オレンジ色の照明)
- 生活騒音のない静かな環境を確保
私は息子に、「睡眠は脳の食べ物だから、いっぱい食べさせようね。じゃないと、お腹が空いて怒っちゃうから」と教えています。眠っている間も脳はしっかり働いています。今現在の睡眠の質を振り返り、もし改善の余地があれば是非取り組んで頂きたいと思います。
良質な睡眠で、皆さんの1日がより前向きなものになりますように。
*1 睡眠に関する世代別の推奨事項がアップデートされました。厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針の改訂について(案)」https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001151834.pdf
*2 成田奈緒子 『「発達障害」と間違われる子どもたち』(2023)青春出版社。
