ストレス軽減のための「アサーション」というスキル

Occupational Health
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メンタルヘルスにおいて大切なスキルは、いくつかあります。

以前、ある会社のAさんとの産業医面談での会話の中で、「面倒臭い会話を避けたら、かえってストレスになった」という話がありました。Aさんは優秀な社員で、周囲から頼られたり、多様な業務を任される方でした。しかし、担当していたプロジェクトでトラブルが発生し、気持ちに余裕がなくなっていた時に、別の仕事をふられることがいくつか重なりました。その時、Aさんは自分の状況を説明することが面倒に感じられたため、タスクを受け取ってしまいます。結果として、集中力の低下、不安と不眠の出現、そしてメンタルヘルス不調に至ってしまいました。

|自分にも、相手にも、誠実に対応する=アサーション

ビジネス環境では、上司やクライアントの要望に応えられないときや、どうしても自己主張をしなければいけない場合があります。しかし、どんな考え方で、どのように対応していけば良いのでしょうか。特に、関係性を崩したくない相手との交渉には、何が必要になるのでしょうか。

ここで、コミュニケーション・スキルの1つの、アサーションを紹介したいと思います。
アサーションという考え方を通じて、適切な方法で自己表現をし、相手からの対応も受けとめられるようになることは、ストレスマネジメントにおいて重要なスキルの1つです。

アサーションとは、自分の状況や考えを相手に誠実に伝える一方で、相手の状況にも配慮をします。その前提には、自分も相手も大切にするという考えがあります。相手からのストレートな反応も、相手に自由な自己表現があるので、こちらから期待したり、コントロールしたりすることはできません。双方の意見が食い違ったときに、攻撃的に相手を打ち負かしたりせずに、お互いが歩み寄って一番いい妥協点を探る、という姿勢をとります。

|具体的なスキルとしてのDESC法

アサーションになるための会話術として、DESC法(デスク法)があります。このDESC法を具体的に見てみましょう。

①Describe(描写する)ーできるだけ客観的に、自分の状況の事実を述べます。

“Bさん、前回一緒に携わったプロジェクトですが、プレゼンに必要な段取りを私1人で担当し、丸1日かかりました。”

②Explain(説明する)ーある状況の中で感じたことや考えたことを説明します。主語は「あなた」ではなく、「私」を用います。

“そのことで、私はかなり焦りましたし、正直しんどかったです。やらなければならないことにパニックになったような感覚でした。”

③Specify(提案する)ー現実的で具体的な要望・妥協案を述べます。

“次回の時には、是非Bさんにも一緒に担当して欲しいと思っています。”

④Choose(選択する、結果を想定する)ー③の後、相手の回答がYesとNoの両方に対して、自分の中で選択肢を準備しておきます。

Y:効率良く進められるように、私ができる段取りを明確化しておこう。
N:Bさんがダメなら、Bさんに別の人をたててもらうか、それでも難しいならエスカレーションをしよう。

①~④のプロセスがありますが、産業医として重要だと思うのは②です。ビジネスパーソンの中には、「今はちょっと辛い」「しんどかった」という弱さを見せることに抵抗を感じる方が少なくありません。それが評価につながることを懸念される人もいますし、実はご本人自身が「辛い」ということに気づいていない場合もあり得るのです。

アサーションは、自分に誠実になるところからスタートします。自分の気持ちや感情、また体調の変化に気づくことから始めましょう。そして、状況の説明から、その渦中での自分の思いを伝えていくことで、相手側にも状況に対して考慮する余地が生まれます。

また、言葉にならない態度やしぐさに意識することも効果的です。「何を言うか」を準備できても、その表現方法が険しい顔つきで、早口で言ったとしたら、やはり攻撃的に受け止められてしまいます。アサーションでは、落ち着いた声のトーンで話し、アイコンタクトや、時々にこやかに表情を作ることが有効です。相手の話を遮ったりせずに、話のペースやタイミングも考慮しながら話を進めていくと良いでしょう。

|アサーションを通じて、信頼関係を構築する

業務が過密さを増しコントロールできない、もしくは業務以外のプライベートのことで余裕がない。そういった状況は、誰しもに起きうることです。その時に、相手の要望を無視し自分のことを優先したり、逆に、相手に気を使いすぎて自分のことを後回しにしてしまうことを選ぶと、どうしてもイライラや不安は募ってきます。

困難な状況の時こそ、アグレッシブな態度や、パッシブな態度を取らず、アサーションを取り入れることで、ご自身の気持ちを率直に伝えたり、今はできない(=相手の期待に応えられない)という時にノーと伝える。このスキルはすぐに身につけることは難しく、意識的なトレーニングが必要です。なので、何かモヤモヤとした状況や困難な状況に遭遇した時には、DESC法で気持ちと考えを先に書き出してから、相手との交渉をしてみることをおすすめします。継続をしていくことで、徐々にコツをつかみ、困難な状況におけるストレスは軽減されていくことでしょう。

アサーションの考え方は、自分のできること、できないことを相手に誠実に伝えることを可能にします。そして、長期的には、周囲とのより良い信頼関係の構築に役立てることができるのではないでしょうか。

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情報社会のビジネスパーソンにとって、
疲労の蓄積を予防したり、
仕事への向き合い方をコントロールする等、
自らの心身に目を向けることは重要になってきています。
仕事のスキルやナレッジを磨くのと同様に、
自身のメンタルやフィジカルを整えていく。
安定したコンディションを維持するための知見を、
医学や心理学等をベースに紹介します。