突然ですが、こんな疑問を抱いたことがある方はいますか。
“メンタルに強い人は、ストレスをどう受けとめているのだろう”
変化の速いビジネス環境では、業務量や対人関係において非常に強いストレスを感じることは誰しもが経験するもの。でも、効果的なストレス対処法を持っていないことは少なくありません。一方で、同じ職場環境でも、メンタルヘルス不調になることなく、マイペースに仕事をする方もいますよね。
では、ストレスとうまく付き合う人とそうでない人には、どのような違いがあるのでしょうか。
ここでは、「ストレスの受け止め方」ついて心理学の切り口で考えてみたいと思います。
仕事に関するストレスで最も多い原因と年代は?
近年、職場でのストレスは日常的なものとなりつつありますが、労働者の実に過半数がストレスを感じています(下図)。

特に30代では、6割以上の方が強いストレスを抱えていることがわかりますね(下図)。
この年代は、マネージャーやグループリーダー等、責任や役割が大きくなる一方で、プレイヤーとしても現場の業務をこなすことが求められることも多いことがストレスの要因になっているかもしれません。
では、労働者のストレスの内訳をみてみましょう。やはり、ストレスの大きな理由になっているのは、「仕事の質や量」。人手不足による圧倒的な業務量や、個人が持つスキルと合っていない業務アサインなど、実際に産業医面談においても、これらのことがストレス要因になっていると話す社員は多くいます。

また、仕事での失敗や責任も、人によっては大きなストレスになり、心身の不調に至ることも少なくありません。
一方で、これらのストレスにうまく付き合いながら、自分のペースを保つことができる社員も多くいます。職場環境は同じはずなのに、一体何が違うのでしょうか。
では、この「違い」についてヒントになる理論をご紹介します。
ストレスに対する「自分の受けとめ方」に注目してみる
ある会社で、社員が「自分が出す提案書には、ダメ出しばかり出される。怒りを感じるし、自信もなくしそうだ」と面談に来たことがありました。
聞いてみると、特に怒鳴られているわけではなく、作成した提案書に対して批判的な意見ばかりとのこと。でも、こちらの社員はこの出来事に対して、怒りや自信喪失にまで至っています。
何かの出来事に対して、それをどう受け止めたり捉えるかについては、心理療法で有名な「ABC理論」を参考に見てみましょう。
最初は、「出来事」にはじまります。
次に、何か自分や周囲に起こったことに対して、瞬間的に「考え」がよぎります。
その考えから「感情」が生まれる、というのがABC理論です。
この社員のケースは、
A=提案書にダメ出し
B=自分には能力がない
C=自信をなくす
と見ることができます。
このABC理論で最も大事なのは、「Belief=捉え方・考え方」です。というのも、この「B」が、次の「C=気持ち」に直接影響をしてしまうからです。「自分には能力がない」という考えからは、前向きな気持ちよりも、ネガティブな気持ちを引き出してしまうことは想像に難くありません。
このABC理論で、違うケースも見てみましょう。
とある社員から、次のような悩みを聞きました。
「Xさんにメールをしたが、特に返信がなかった。以前もこういうことがあった。きっと私は信用されていないのだと思う・・・」
こちらの社員は、Xさんとの関係において不安を抱えておられます。
しかし、メールの内容やそれが起きた文脈をより細かく聞いてみると、報告内容のものが多く、必ずしも返信が必要というものではなさそうです。
このケースを、ABC理論で見てみると、
A=返信が複数回なかった
B=私は信用されていない、Xさんは自分を避けている
C=不安だ、辛い、
と見ることができます。
このようにABCで区別してみると、Cのネガティブな気持ちが、直前のBによって引き出されていることが見えてきます。
このBは、「自動反応」とも呼ばれることがあります。なぜ「自動」かというと、自分ではほぼ気づかない、無意識なものだからです。皆さんが、朝歯を磨くときに、どこから磨くかを考えずに磨かれるように、考え方にも無意識の習慣があります。もちろん、全ての習慣が悪いわけでは決してありません。人の良いところを見つける習慣や、失敗をしても次は何とかなる、というような前向きな思考習慣も多くあることでしょう。
ただ、ネガティブな気持ちが引き出されたときに、このABC理論を使ってみると、Bが影響を与えていることにあらためて気づくのではないでしょうか。
では、このBは変えることができないのでしょうか。
いいえ、あらゆる習慣が変えられるように、Bも変えることは可能です。
ただ、いっきに変える、全てを変えるのではなく、「友人だったら」の視点を持つことから始めてみてはいかがでしょうか。
「友人だったら」の視点
前述の「ダメ出しをされた」という社員や、「メール返信がないから避けられている」という社員が、「こんなことがあった。あなたはどう思う?」と聞いたとき、皆さんはどうお答えになりますか。
また、皆さんが怒りを感じながら同僚や知人に相談をされた時に、「それ、考えすぎじゃない?」と助言を受けたことはないでしょうか。
自分に起きている出来事から少し離れ、「友人がこの相談を持ってきたら、自分はどんな助言をするだろう」と考えてみる。もしくは、「友人のあの人だったら、どんな言葉をかけてくれるだろう」と想像してみる。とっさに感情的になりそうな場面を、上記のような状況として捉えなおしてみると、一見「大変なストレス!」と感じていたことも、意外とそうでないと思えたり、うまくやり過ごすことができたりするものです。
私たちは誰しも、他人の話を聞くときは冷静でも、自分のことになるとそうはいかなかったりします。でも、それによって、不安が増大したり、自分に自信をなくしてしまう可能性があります。だからといって、すべてに対してポジティブに考えよということではなく、自分の感情や気持ちは、自身の考えや捉え方から生まれていることに気づくことが重要なのです。
いかがでしたか。
ABC理論を使って、感情と思考の関係性を見ることができたのではないかと思います。
次回は、ネガティブな感情を導きやすいクセのある思考を扱っていきます。研究により10種類に分類されたクセですが、濃淡はありながらも、きっと誰しもが経験したことがあるような思考です。
メンタルに強い人はなぜ強いのか。それを知るヒントにもなると思います。ぜひご自身のストレスマネジメント活かして頂ければと思います。
